世界の中心でマイを叫んだけども

06,02,12公開ー
日記とか、感想とか、考察とか。
ぼそぼそとつぶやくようにもなりました。http://twitter.com/Kuro_ino
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管理人が体験した東日本大震災 2011.3.11 21:10〜
※このシリーズは、当ブログの管理人が東日本大震災に遭遇した際の行動と、
 そのときに考えていたことを出来るだけ詳細に、なおかつ率直に書き綴っていくものです。

 当時の震災をミクロな観点で、ありのままに書き綴っていくため、
 意味が分かりづらかったり、嫌悪したくなるような描写もたびたび登場するかと思います。
 
 物語のようにテーマ性があるワケでも一貫性があるワケでも勧善懲悪というワケでもないので、
 その点だけはご了承いただければと思います。


原付を押し歩き始めて間もなくのこと。
前方に、自転車を押して歩く男性の姿が見えた。
その足取りはやや緩やかであり、対して急ぎ足だった私は、やがて男性に追いついた。

男性が私の気配に気づき、自転車を寄せて道を譲ってくれた。
私はいちど足を止め、
「こんばんは」
と声をかけた。
田舎者同士の空気のせいか、それとも異常な状況下における空気のせいだったのか、
男性も話しかけられるのが分かっていたかのように、
「こんばんは」
と挨拶を返してきた。
「大変なことになりましたね」
男性が続けて口にする。
国道に並ぶ車列のライトを頼りに男性を観察した。
年齢は50代後半から60代前半、スーツを着用。
背が高く、背筋はピンと伸びている。

「そうですね、まさかここまでとは」
「ええ、停電も仙台だけかと思いきや、こっちまでずっとなんですものね」

男性の話しぶりは、はるか年下である私を相手にしているにも関わらず、
軽んじている雰囲気も、かといって意図的に丁寧に喋ろうとしている感じもない。
仕事を長年続けてきたからこそ出せる雰囲気なんだろうな、と思った。
同時に、ひとつの疑問が湧く。

(この人は、津波が来た事実を知っているのだろうか?)

場合によっては、気軽に口にできない。
数瞬だけ悩んだものの、

「あの・・・津波がきたことはご存じなんですか?」

私は尋ねた。
一瞬の沈黙もなく、答えが返ってきた。

「ええ。といっても、人づてに聞いただけなんですけどね。それで妻が心配で。
 電話も繋がらないですし。これを部下に借りまして、仙台から帰ってきたところなんですよ」

男性が、自転車を軽く示しながら言った。

「仙台から・・・! それは、大変でしたね・・・」

特別に体を鍛えているワケでもなさそうな目の前の男性が、
この年齢で40〜50劼瞭擦里蠅鮗転車で走行する苦労を、私は想像した。

「いやぁもう大変大変。こたこたになっちゃって、それでもう歩いちゃってたところなんですよ」
「なるほど・・・ご自宅は、どちらなんですか?」
「○×駅ってご存じですか?」

男性が口にしたのは、私の実家から1劼曚彬姪譴砲△襦∈粘鵑蟇悗量樵阿世辰拭

「あそこから○○っていう所へ行って、そこからちょっと奥まったところに入っていったところなんですよ。分かります?」
「ええ、はい。ぼくの地元も○×の××なので・・・」

応答しながら、私の頭の中で、思考が進んでいく。
男性が口にしたのは、私の実家とは比べものにならないほど海の近く。
海からの直線距離でいえば、おそらく100メートルか200メートルほどのハズだ。
仙台空港が呑まれていく映像が脳裏に浮かぶ。
先ほど目の当たりにした、海から数厠イ譴親始ですら塞がっていた事実も。
海から離れたところでもあの有様だ。
男性の家がある場所などは、ほぼ間違いなく、

「妻は足が悪いもので。寝たきりというワケでもないんですけど、
 動いて回ることは出来ないんですよ。近所の誰かが助けてくれてたら嬉しいんですけどね・・・」

そう語る男性の様子からは、色々な思いを感じさせた。
奥さんのことは諦めているようにも思えた。
本当に誰かが助けてくれていると信じているようにも思えた。
それらとは別問題として浮かび上がる疲労の色。
なんて言葉をかけるべきだろうかという私の選択肢の中に、

「そうですね、絶対たすかってますよ」

という言葉も浮かんだ。
けれど、
(ヘタに期待させたら、もしダメだったときの落胆も大きくなるだろう)
という考えが、それを口に出すことはさせなかった。
結局、私は、

「そうですね・・・。そもそもここら辺は、津波ってどの辺りまで来たんでしょうかね」

知らないフリをした。
2人で並んで歩き続け、やがてある交差点に辿りつく。
そこから海岸方向へと伸びる道を行けば、男性の地元に向かうのには適したルートだ。

「私はこっちから行ってみようかと思うんですが・・・」

私はまた迷う。
確かに、そのルートが使えるのならば、私の実家に行くのにも使える。
しかし、先ほど見た津波の被害を考えると、途中で通行不能になっている可能性が高い。
しかも、このルートが使えない場合、その事実を男性に伝えなければならない。

「えっと、じゃあ、通れるかどうか見てきますね。もしも津波がきてたとしてたら、
 この道、通れなくなってるかもしれませんし」

そう伝えて、私は再び原付で走りだす。
私自身、「ひょっとして通れるかも」という思いも抱きつつの出発だった。
しかし、数百メートルほどいったところで私は原付の速度を落とすことになる。

(・・・・・・ダメだ)

その場所は木々の影になっていて、星明かりは届かない。
しかしそれでも、細かく判別するのが困難な、大量の何かによって道がふさがれているのは、明らかだった。

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